金槌で貝を割って周辺の肉質部と一緒に鰓下腺を取り出し(この作業には、数日間を要します)、ボールなどに集めすりつぶします。直ちに直射日光の下で濃紫色になるまで酸化発色させますが、日光にあたっていない表面下は、黄色っぽい色で酸化が進んでいないのでよくかき混ぜ、完全に濃紫色になったものを源染料とします。
染色に際しては、このものを温アルカリに溶解した液中にハイドロサルファイトのような還元剤を混入することにより薄緑色のロイコ液が得られ、その溶液中に絹等を繰り入れ、一定時間侵染することにより濃黄色に染色されます。
つづいて、繊維を引き上げかたく絞って空気中に放置することにより、赤紫色に発色します。

わたしはこの技法で絹の貝紫染めを行っています。染ムラも少なく色素のストックができることなどが利点です。
いずれにしても貝紫染は根気と臭気の闘いですが、染めあがった美しさはすべての苦労を払拭してくれます。
下の画像は、2001年3月に絹糸1.5kgを染色したときの工程画像です。
写真をスキャナーで取り込んだもので、本当の色合いが出ていないのが残念ですが、ご覧下さい。リンクと簡単な説明を付けています。

1回目の染色  薄紫色に仕上がりました

携帯電話と比較してもらうと、貝の大きさがわかると思います。
アカニシ貝を割ってパープル腺を容器に集めた写真です。お茶碗半分で、アカニシ貝15kgが必要です。
これがが空気に触れ、日光に当たると写真のすりこぎ棒のような赤紫に変色します。
1.5kgの絹糸を5本のステンレス棒に分け染色の始まりです。
藍染めの還元法と同じく、溶液中から糸を引き上げたときは黄色です。
糸をさばいてやると、黄色から青に、そして紫になっていきます。
空気に触れ酸化が進むと青から紫と変化します

2回目の染色  赤紫色に仕上がりました

ロイコ液の色が、濃黄緑色。空気によくあたる糸の表面の色が、黄金色から赤紫に変わっていくのがわかります。
きれいな、赤紫色になりました(実際の色がでていませんが)